日本企業は一揆的集団

日本型の企業は特徴があると言われます。

  • 年功序列
  • 長期雇用
  • 長期的な取引先との関係(経営目線が長期的) 
第2節 日本企業の特徴とその変化

 

これがどうして起きたのか?これを説明できる様にしたい。その為に原型となるモデルを歴史上がら拾い上げてみる。

企業の特徴と大雑把に言っても、大きく言えば「グルーブ企業のまとめ方」小さくいえば「課内での職場関係」など色々あります。今回説明するのは「職場で直接関わる人達」の関係性を主に説明します。規模的に課内の運用というべきかな?

つまり超身近に体感している「日本のやり方」をモデル化してみようという訳です。

一揆的な課内運用

 まずは結論から。一揆が今のやり方の原型。

一揆のやり方って正に日本の企業活動の原型ともいうべき組織論、方法論であって、これはもっと宣伝されていい。一揆は「契諾状」という簡素な契約書あって考え方が特に分かり易い。松浦党の「一揆契諾状」によれば一揆の契約、第1条目は次のようになっている。

一 公方の御大事においては、分限の大小を云わず会合せしめ、中途に談合を加え、多分の儀(多数意見)に随い、急速に馳せ参ずべし。但し火急の御大事出来せば、承り及び次第に馳せ参ずべし

 

 要は、「何かあったらまずは仲間に報告しなさい。それからどうすべきか仲間内で話し合ってどうするか決めましょう」という内容である。

 これが「日本のやり方」の全て。課の中に新人が配属されても「貴方は明日からこの仕事をやるのよ」といってマニュアルを渡して運用していく訳ではない。配属が決定されると「課の人達」が適当に話し合って新人に仕事を割り振る。月日が経つと新人の特徴やら長所が考慮されて人材配置の最適化が行われる。結果的に新人は「課の人達」として組み込まれる訳だ。

f:id:watakenn3:20160529172049p:plain

 

新人サイドにとっても最初に教わるのは「何かあったら上長に相談しなさい」である。これだけは本当に徹底される。どんなに簡単な事でも「確認します」と言って話を一旦打ち切り、上長に相談して結論を出してから報告するという「正しい応対の流れ」を習得させる為か、これだけは本当に徹底される。その内に課内の全てが「報告→話し合い→結論」と言う流れで運用している事を理解して、この流れに則って仕事を覚える訳です。

誰が決めたのかよく分からない

では「会社の上部の命令」と「課内の結論」が齟齬した場合、どうするのか?上部の命令の中には無理難題があり課内では到底受け入れられない場合がありますが、この時どのように応対するのか?どちらが優先順位として高いのか?

f:id:watakenn3:20160529180232p:plain

形式的には会社の上部で決められた命令が優先されます。課内は「分かりました」と言って命令を受け取る訳です。ただこれを本当に実行するかは課内の問題であり、実行された様に見せて実は何もやらないという場合もある。では課内の結論が最終決定かというと形式的には「そうではありません」という。「では誰がそう決めたのか?」というと課内の誰も分からない。俗に言う「なあなあ」な状態はこうして生み出されます。最終決定が「上部の命令」なのか「課内の結論」なのかが不明なのです。

ここが一揆的課内運用の悪い部分といえるでしょう。上部の意思決定が下部へ伝達され必ず実行されるかというかそうではない。では実行しなかったのは何故か?誰が実行しなかったのかというとよく分からない。

ではこれは必ずしも悪いのかというとそうでもない。上部からの命令が現場の要請と全く違う場合、上部の命令を実行すれば、会社の不利益が拡大します。一揆的な課内運営はこれを食い止める事が可能です。逆に上部からの命令と課内の要請が同一ならば大きな力を発揮するやもしれません。

自覚すればデメリットの最小化は可能

ここで自覚しなければならないのは一揆的課内運営の規則性、法則性です。これを理解すれば課内運営のメリットを最大化、デメリットを最小化する事が可能となります。

 

シンプルイズベスト、「それはウチにとって不利益だ」と思えば実行されなくなる。従って「あなたにとってこんなメリットがありますよ」というのがスムーズに出て来れば課内一揆を動かす事が可能となります。

言い方一つで人が動くかどうかが変わってしまう。それが一揆的運用のいい部分であり、悪い部分である。