予定が「変わる」という事

今回の地震で私が強く感じた事を記録として残しておこう。
日本の国民性についてだ。



テレビは東電原発について後手後手な対応だと騒いでいる。今後の計画がまるでない、無計画だと騒ぎまくってる。計画停電に対しても実行されないと返って批判を浴びている。それに連動して電車も運行本数を減らしている。こんな状況でも国民は電車にのって会社に行こうとするから改札はパニックに陥っている。ガソリンスタンドは毎日並んででも給油しようと列を作っている。被災しても律儀に列を作って買い物をする光景に皆、いや全世界が感動している。



これに共通する事って計画とか予定とかそんな言葉がぴったりだよね。予定が崩れた事に非常に国民は怒ってるわけだから。


そうこの国の根底にあることって「予定」なんだよ。


この国の人々って基本的に状況を先読みして計画、予定を立てる事が大好きだ。そんな国民性だから予定通りに電車が動くし到着する。予定通りに飛行機も飛ぶし、予定通りにモノが届く。予定通りに店は開店されるし、予定通りにイベントも開催される。予定通りに商品は開発されなければならないし、予定通りに書類も作成しなければならない。予定通りに動く事が世の中の前提になっている。だから世の中の社会人というのは予定を守る為に命を削ってでも約束を守るし、それを守らなければ大勢の人に迷惑がかかると無意識に思ってる。自分の健康よりも予定を守る為に働き、うつになる人も沢山いる。自殺の理由も第一位が経済的理由、予定通り動く世の中に順応出来ない事を恥じんで死んでいる。災害にあっても律儀に並んで買い物するという行動の根底にあるのも「並べば買える」という予定が成り立っているからだ。東京は被災地でないからこういう予定が成り立つが、本当の被災地では「並んでも買えるか分からない」という状態が続いている。この状態では予定が立たないので日本人でも犯罪に走るようだ。


明日も同じ状況がくると考えているし、明日も同じ仕組みで世の中が動くとに考えている。明日も同じ予定が立つと考えてるし、明日も予定は守られると考えている。今日も予定外な事は起きないし、明日も予定外な状況は起こらないと考えている。



つまりどういう事?全く新しい考え、全く新しい文化というのは生まれにくい国民性ということよ。よく言われる日本は変化の速度が遅い‥その根底にある理由は予定が狂うから。幕の内一歩みたく「予想外の事に極めて弱い」(ベテラン武戦、鴨川会長のお言葉)応用が聞かない国民性なのよね。予想出来ないことを何よりも恐れる国民性。予想出来る事を何よりも好む国民性。昨日と同じ生活を何よりも好む国民性。


それが日本だ。


だって新しい考えって事は、昨日まで通じた予定が明日から通じなくなるという事。新しい文化という事は、昨日とは違う状況が生まれてしまうという事。それじゃ困るでしょ?予定狂うから。ホリエモンみたく社会にとって予定外な事を起こそうとすると瞬く間に逮捕して予定を守った。小沢一郎みたく新しい日本、予定しない日本をつくろうとすると全力で世の中が潰しにかかる。その点SoftBank孫社長は巧妙だよね。プロ野球チームや、電波の取引など、日本の予定にのっとった上で予定を変えようとしているのだ。


そうした視点で世の中を見て欲しい。日本は今日も明日も同じだと考えて仕組みを考える。予定の上に予定を立てるのは容易いから好まれる。だけど継ぎ接ぎだらけになり易い。古臭い制度でも継ぎ接ぎで何とかしようとするし建物でも継ぎ接ぎ工事でなんとかしようとする動きが多い。一度、全てを真っさらにして再び制度を整えなおすなんて事、近年では明治維新、敗戦でしか起こらなかっただろうね。


新しいことを何よりも恐れる国、日本。




★★★★★★



でも今回の大地震で私は日本も多少変わるだろうと考えている。予定が立てられないという状態がこれから数カ月間続く。これが数ヶ月も続けば人々の思想も、「予定がキチンと守られなくとももたいしたことないんだ」という風に変わっていく。こんな事態戦後からなかった。戦後から続いた「予定通り続く世の中」がついに終焉を迎えるのだ。予定どおりに進まない世の中…そんな世の中なら新しいことに挑戦しようとする風土も次第に整ってくる。予定外の事を容認する世の中になっていくだろう。

世の中の偉い人はすでにこう言っている。


「この大震災は新しい戦後となるだろう」



何もこの大災害を悲劇と捉える必要はない。今まで通り予定を継ぎ接ぎすればなんとかなるなんて思っている人はいなくなる。そう思わない企業はこれから淘汰される。この後に及んでも選考や説明会を続行するような悪しき企業の情報はネットに集まり激しい避難を浴びるだろう。その一方で対応した企業は生き残る。今までの市場の自浄作用では起こり得なかったような企業の選別が始まる。制度の継ぎ接ぎから生まれたブラック企業が生き残りにくい世の中になっていき人に優しい企業程評価される世の中になっていく。ワークライフバランスは今年を機に大幅に改善されていくだろう。


戦後日本が作り上げた仕組み、制度はようやく終焉を迎えた。
これからだ。ようやく日本は変われる。


私たちがこれからの日本を作っていくのだ。