震災から1年立っても被災地がちっとも復興しない理由

あの痛々しい311から丁度一年立ちました。一周年という事で様々なTV局が特集を組んで、衝撃的な津波の映像、その後の被災地の様子、復興問題、人口流出、雇用問題等が紹介されていました。あの痛々しい記憶を忘れないためにも、また改めて現地の問題を認識しなおし将来について真剣に考えなくてはならないなと考えて様々なTV番組を見ました。

私が見たのはNHKの番組でした。内容についてはこちらをご参照ください。
20120310 #NHK スペシャル「シリーズ東日本大震災 もっと高いところへ~高台移転 南三陸町の苦闘」 - Togetterまとめ



地方自治体があんなに頑張っているのにも関わらず復興が進まない。被災地の復興が進まない理由はなにか?


地方自治体の情報鎖国体制だったのか


★★★★★★

今回の番組の意思決定プロセスを図にしてみました。復興に直接関わる部分を赤で示し、最後にそれぞれの感想を述べています。

なんと地方自治体は5月に決定された高台候補地に問題がある事に気がつくのに7ヶ月も要している事が分かります。この7ヶ月間の間、地方自治体は国の3/4負担提案をはねのけ、あくまでも全額負担を要求し続けています。全額負担要求が通った時に"始めて”遺跡問題に気がつき大慌てで地元住民と話し合い、結局高台移転は白紙化になってしまいます。高台移転合意から7ヶ月もの間、地元住民と地方自治体の間で十分な情報共有はされた様子はありません。地方自治体は、1/4に当たる金額を何とか工面するために国の方向しか見ていないからです。

地元住民と地方自治体の間で、情報共有の質が余りにもお粗末だった事は明らかです。住民と自治体が密に話し合いをしていれば住民から「そういえばあの高台ってなんかなかったっけ?」「3年位あそこの土地調査してたけどアレなんだったの?」という情報が飛び交ってもおかしくはありません。そうなっていればいち早く遺跡問題に気が付き、7ヶ月も待つことがなく「高台移転は無理」というのが分かったでしょう。早い時期にわかっていればトロイ国の決定を待つことなく「別の候補地を探そう」という話になり、復興がより早く進んだ筈です。


元々「遺跡問題」に気がつけるのはその情報を唯一もっている(持っていた)地方自治体しかいません。もし、初めから遺跡情報が一般共有化されていれば、国であれ地元住民であれボランティア団体であれ外国人であれツイッター民であれ、誰かが「高台→遺跡は?」と気がついたでしょう。遺跡情報を持っている人間が地方自治体の中でも極僅かに限られていたからトロイ国の決定よりも後でないと気が付けなかったのです。

まとめるとこの番組の大部分は地方自治体が「地元住民と密接な話し合いを怠った為」「情報を鎖国体制にしていた為」に起こった悲劇です。番組内でしきりに「職員不足」をあげていましたが、「これは情報鎖国体制”だから”足りないのでは?」と勘ぐってしまいます。

★★★★★★

ではなぜ、この様な鎖国体制が築かれてしまったのか。”地方自治体の情報公開が余りにもお粗末”というのは311が起こる以前から指摘されてきたはずです。


次にそれぞれの感想が”誰”に向けて発しているのか見て行きましょう。地元住民は明らかに「国」に対しての感想です。大金をつぎ込んでくれるのは地方自治体ではなく国ですから、当然です。地方自治体の感想も「国」です。申請は大金を肩代わりしてくれる「国」に対して行うので内容は難しく、時間を要した筈です。この時間をかけた申請が「高台移転の白紙化」によって無意味に終わり、再び難しい申請を繰り返さないとならないのですから当然の感想です。国はそのまんま「国」。


誰も地方自治体に期待していないんです。被災によって税収不足、体制が貧弱…地方自治体そのものが弱っているのもある為か、全員「国が」「国が」としかイイません。しかし国は万能ではありません。地方自治体”しか”もたない情報というのも大量に存在しています(被災地なら尚更)。ですが最近、情報公開の声を全く聞きません。語られません。皆、大金に目が眩んでいます。「地方自治体が弱ってる」「国が大金をくれる」これが理由で、地方自治体の情報公開の重要性が叫ばれないのではないでしょうか。



被災地は復興しなければならない分国から大金を恵んでもらえます。だからこそ地方自治体の情報公開化が重要なんです。情報公開がされていないと、住民は要らぬ議論を重ねる事になり、その分復興が遅れます。今回の番組内容によれば、それが出来ていなかった。だから7ヶ月も苦しんだ挙句、何も決まらなかったという最悪の事態を招いてしまった。

非常に残念な、基礎的な事すら出来てなかったと痛感させられました。





震災で無くなった全ての人にご冥福をお祈りします。