洋服雑誌ビジネスのなるほど

寒い。1月の終わりだから寒くて当然である。

ところがコンビニの雑誌コーナーで洋服雑誌では早くも「今年の春のトレンド洋服」というのが特集されていた。おでんが恋しいこの季節に春特集の文字が踊る表紙絵とはなんとも滑稽である。



普段は嘲笑の対象として流すのだが、何故か今日は深く考え込んで、関心するまでに至った。
という事でその理由をちょいちょい書いていこう。

★★★★

これ、説明するのにイノベーター理論が必要だから参考程度に頭に入れとこうか。

革新的な新商品がでてきた時、どのタイミングでそれらを利用するか、という観点で消費者を(Everett M. Rogers教授が)分類したイノベーター理論という(らしい)。

1)イノベーター…“新しいモノ”を“新しいから・革新的だから”という理由で買う人  全体の数%程度
2)アーリーアダプター…自分が“価値がある”と思えば、周りに持っている人が少なくても買う人。流行に敏感なオピニオンリーダー  15%未満
3)アーリーマジョリティ…新しいものには飛びつかないが、ある程度普及し始めると早めに購入する人  全体の3分の1
4)レイトマジョリティ…もしくは、フォロワー かなり流行始めてから購入する人  同じく3分の1
5)ラガード…とても保守的で、イノベーションが伝統になるまで買わない。 “みんな持ってる”状態になってから買う  15%程度

これを服屋の顧客風に言えば

1)イノベーター…最早自分で服を作る人。最近で言えば「フェアリー系」(きゃりーぱみゅぱみゅみたいな格好の人々)とか。要はオタク 数%
2)アーリーアダプター…流行に敏感な人。冬の時期に春の洋服を一式購入し、それを職場の話題にするような人々 15%未満
3)アーリーマジョリティ…春になったら春服を買う人 33%程度
4)レイトマジョリティ…春が終わる頃の売り切りセールにようやく春服を買う人 33%程度
5)ラガード…周りに合わせて無難に対応する人。 15%程度

イノベーター理論によれば服屋にとって最大の顧客は、3)アーリーマジョリティ4)レイトマジョリティである。というかこれだけで全顧客の2/3に当たるわけで「この層に受ける商品を」「どれだけ安いコストで」開発出来るのか?というのが服企業としての命題になる。


★★★★


ここで必要なのが「売れ筋商品の情報」である。当然だが春になれば「売れ筋商品の情報」は出る。しかし下手な鉄砲も数打ちゃ当たる理論で色んな趣向の服を全面的に作っていたら大量生産出来ない為「安いコスト」で服を提供出来ない。とはいっても同じ様な趣向の服を作ってコストを下げても、トレンドを読み外せば企業として成り立っていけなくなる。


企業は「より確実に」売れ筋商品を見極める必要があるわけで、ここで開発された手法が「1月に春服特集」という結論なのだろう。簡単に言えば洋服雑誌というのは1)イノベーター2)アーリーアダプターだけが読めばいいのである。

流れを簡潔に記せば

  1. 色んな趣向の服を作り
  2. かなり早い時期に「1月の春特集」というのを組んで
  3. イノベーターやアーリーアダプターがゴゾって買うor反応する(この時点では大多数の人間は無関心)
  4. 服の売れ筋情報が売上として上がってくるので
  5. その情報を元に「今年売れる趣向の服」だけを大量生産して
  6. アーリーマジョリティやレイトマジョリティを迎える。

という仕組み。
これなら企業は殆どリスク無しで安価に売れ筋商品だけを仕入れる事が出来る。素晴らしい情報入手ルートだったんだね、洋服雑誌。


★★★★

ここで重要な事は特定のレイヤー層の声だけを拾い上げる「情報の純化」作業だ。ネットが発達してあらゆるレイヤーに属する顧客の意見が聞ける様になったが、そもそもその分野のアーリーアダプター層が購入しなければ大半の顧客は動かないのである。

従って企業は「アーリーアダプター層のみの純化した情報」だけを集める事に注力し、細心の注意を払ってでも「あらゆる顧客から情報を吸い上げて作った商品」を作らない様に努める必要がある。「あらゆる顧客から情報を吸い上げて商品」を作ってもアーリーアダプター層が気に入らなければ残りのアーリーマジョリティ層もレイトマジョリティ層も買わないのある。アーリーマジョリティとレイトマジョリティだけで全顧客の2/3を占める。ここを売り逃してしまうようでは企業は発展する事は出来ない。


洋服雑誌の場合、特定の層の声を聞くために使われてる情報フィルターが「超早い時期」なのだ。


……



とはいってもこれ、自分で納得したシステムであって実際に使われているシステムかどうかは不明なんだよなー。
(・・;)